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6/25、opnlabは、「農業と林業の新たなビジネス」をテーマに東京の森で林業を営む東京チェンソーズ 代表 青木亮輔氏と、茨城で少量多品種の「エロうま」野菜を提供する久松農園 代表 久松達央氏に話をしていただきました。

  

新規参入が厳しい農業と林業という2つの業界に20代で飛び込んだお2人。2社は業界の従来の常識とは少し異なる独自の路線を模索し、挑戦を続けています。

 

今日も森にいます

東京チェンソーズ 青木亮輔

 

林業という仕事

林業の映画「WoodJob」でも語られていますが、林業は祖先が植えた、30年、50年、100年の木を切って売る、長い時をかけて行う仕事です。

 

36%が森の東京。この東京の西のはずれの檜原村を拠点に東京チェンソーズは活動しています。正社員7名アルバイト4名。そして夏以降新たに2名が加わります。檜原村は1995年に3500人だった人口は2010年に2500人へ減り、林業で従事する人口も急激に減っています。

 

しかし、減っているからこそ、チャンスがある、と青木氏は語ります。

 

森林組合で働いていた青木氏が、その仲間4人で2006年に立ち上げた東京チェンソーズ。ミッションは「東京の木の下で 地球の幸せのために 山のいまを伝え きれいな水と空気を再生し 持続可能な森林(もり)を活かし、育みます」

 

 

東京チェンソーズは、造林・育林、森林の整備。木を植えて育て、間伐などをして整備するという従来の林業の仕事を、自治体や山主から受注。さらに、ツリークライミングや企業のCSRなど、山ならではのイベント事業も積極的に手がけます

 

 

危険でつらい仕事から山を育てる仕事へ

林業は3K(危険、汚い、きつい)の仕事です。死亡やケガの多い職場で、労災保険の掛け率が高い。また待遇に不満を感じる人も多く、事務関係の人は月給で安定してお給料をもらえるのに、山の現場に行く人は日給という不安定な状況に不満を持ち、辞めて行く人も多い業界でした。

 

東京チェンソーズは、従来の林業における職場環境の課題改善につとめます。人事評価の仕組みを整え、ヘルメットなど体を守る道具をそろえ、安心して働ける環境をつくりあげていきました。就業人口が減っている業界にもかかわらず、毎年人を採用し、拡大路線を目指しています。

 


また社員同士のコミュニケーションも大切にしています。働く環境が厳しく、現場に出てしまうと場所も離れてしまうので、facebookを通じて社内の情報を共有します。SNSはミッションを共有・確認するために重要な役割を果たしているといいます。

 

林業を、そして自分たちを知ってもらう

 

特に、従来の林業関係者と異なるのが積極的な情報発信とイベントへの取り組みです。

 

 

林業の実態が世間一般にあまり知られていなかったため、東京チェンソーズのfacebookやメディアなどに積極的に情報を発信しています。朝日新聞が発行する西多摩限定のフリーペーパーで連載も持ち、メディアの取材も積極的に受け付けます。

 

また、イベントを通じて地元の人とも交流。地元のマラソン大会にも参加します。自社でも積極的に企画・開催しています。昔の林業体験会は、山はどれほど危険か、ということを示すような企画が多かったのですが、東京チェンソーズが企画するものは、ツリークライミングやチェンソー体験、職業体験など山の魅力を感じるものがメイン。企業のCSRの受け皿にもなっています。昔、木は木材活用が主体でしたが、今の木材のニーズは3%。むしろ環境整備や環境学習のニーズが97%と高まっているそうです。

 

 

情報発信やイベント開催は、手間と時間がかかる一方、それ自体では利益を大きく生むものではありません。しかし、地道に続けることで、着実に二つの効果がでています。一つは地元からの信頼を得て仕事につながること。二つ目は採用です。

 

地元に密着した活動が安心と信頼を生み、地元の山主さんからの仕事の依頼につながっているといいます。設立当初9割以上であった下請けのシェアが減り、実際直接請負の仕事が増え、売上げ自体も着実に伸びています。

人の募集をすると、定員に対して6倍の応募があり、優秀でやる気のある若手を着実に採用しています。

 

 

東京美林倶楽部とおもちゃビレッジ

東京チェンソーズは、さらに新たな事業に挑戦します。ひとつめは30年かけて美しい林を育てる「東京美林倶楽部」。5万円で3本の木を購入し、30年間年会費1000円を支払い、育成イベントを通じて3本の木を仕立てていきます25年から30年後には2本は間伐のために伐採し、自分のための家具や玩具などを作る事ができます。(イベント参加費や加工費は別費用)

 

また、今の森が提供する木材は、建材にするか、チップにして燃やすかという極端な選択肢しかありませんでした。おもちゃ博物館と提携して、木のおもちゃを作る「おもちゃビレッジ構想」が動き出しました。

 

戦後植えた木が50年を経過し、立派な木として成長しています。東京チェンソーズは、これらの木も含めて、東京の森をきちんと手入れをし、商品化することで、林を育てるとともにビジネスが成長して行く新たな林業の仕組み作りを目指しています。

 

小さく強い農業で生きる
久松農園 久松達央

 

美味しい野菜は「時期・品種・鮮度」が鍵

久松さんは、慶応大学を卒業して帝人に入社し、29歳で突然農業に目覚め起業。久松農園で、路地野菜を年間50種類、7人で栽培しています。販売している先は個人(BtoC)が6割、飲食店などのBtoBが4割。

 

「農園の基本方針」は、おいしい野菜でお客様を喜ばせたい。

 

野菜は「時期・品種・鮮度」が8割味を決めるので、久松農園では、適した時期に、美味しい品種を育てて、鮮度良く届けることに力を注ぎます。

 

日本は、一年中レタスを食べることができる生産環境が整い、旬を無くす方向にむかっています。しかし「旬」の味になかないません。素人が旬に作ったほうが、プロが旬以外に作る野菜よりも美味しい、と久松さんは断言します。

▲右が久松農園のほうれん草

鮮度、つまり採れたての野菜が、そうでない野菜と大きく異なるのは「香り」だといいます。日本の流通が発達して、広域化・長時間化が可能になりましたが、やはり収穫したばかりの野菜は美味しく香りがしっかりあります。

 

▲採りたてで香り立つニンジン

人の感覚は、味覚以上に嗅覚が敏感です。体に悪い物は食べる前に匂いなどで判断できないといけないからです。特に、香りは経時劣化が激しいため、久松農園では畑から台所まで責任を持ち、旬のものを出来るだけ早く届けています。これを実現するため、受注してから収穫・出荷する完全受注収穫のスタイルをとっています。

 

 

例えば、久松農園は、夏に出荷する品種と冬に出荷する品種に同じ物はありません。オクラが採れるのは7月から8月です。山菜のようにはしりがあり、旬があり、なごりがあるのです。

 

久松農園は巨大な家庭菜園と言い切る久松さん。一般的な畑には同じ種類の野菜が一面に並びますが、久松農園は畦ごとに違う野菜が植えてあり、平均3ヶ月かけてひとつの野菜を収穫していきます。

例えば、千切りに適したジューシーで甘みのある「みさきキャベツ」は、収穫期間は5月の1ヶ月間のみ。病気になりやすく、虫に食われやすい。また、柔らかいので運ぶのが大変ですが、久松農園であればそれを作ってお客様に提供することができます。

  

野菜を深堀する

近所の農家の人に、無農薬で50種類の野菜をお客様に直接売っていると説明すると、「面倒だからとてもできない」と言われます。そして、ここに参入余地があると考えるのが起業家です。

 

農業を始める時、行政に相談へ行くと「安定供給」と「物量」が必要だと言われます。しかし小規模な農家でその条件を満たすのは難しい。だから、多様な品種を、農協を通さず自分で売るしかなかったと振り返ります。

   

多様化する今の社会で、野菜もマス市場ではなくなってきています。一つの野菜でもいろいろな食べ方をされています。例えば、日本はトマトをフルーツのように生で食べるのが一般的ですが、海外では加熱してスープストックにします。アミノ酸の含有量が高いトマトを作ると、調理したときの旨味がでてきます。野菜はもっと深堀できるのです。

 

そして、「野菜はヘルシーだから食べましょう」という説教じみた話を嫌う久松氏が考えたキャッチコピーが「エロうま野菜」でした。

▲煮込むと美味しいトマト

 

農業もランチェスター戦略で攻める

農業は林業同様に新規産業がほとんど想定されていない業界で、なおかつ大量に安定的に供給することを求められます。

 

起業したときは久松農園も「日本一の農家」を目指しますが、早々に無理だと方向性を転換。勝つ戦いではなく、負けない戦いをする。勝てない土俵には立たない。2つ選択肢があれば、弱者の戦略をとるようにしたのです。

 

例えば、安売りの土俵にのらない。安売りにのチラシに出る金額のトマトは作らない。このチラシに反応するお客様は資産になる可能性は低く、消耗戦の末、敗れます。

価値の高い深堀りした野菜を提供する。中山間地や都市型農業、そしてポストTPPにおける日本の農業はこの方向に進んでいくのではないかと久松氏は語ります。

 

手持ちの武器で戦うこと

 

久松さんの手持ちの武器のひとつがコミュニケーション力です。口から生まれたと親に言われるほど、コミュニケーション力が高い久松さん。
 

久松農園では2006年にブログをスタートします。青木さんが東京チェンソーズを起業した年と同じです。この頃に起業した人は、情報発信が重要な企業活動のひとつに入っていることを、久松さんは指摘します。

 

久松農園では頻繁にイベントも開催しています。飲食店の人が農園に遊びに来て、野菜を掘ったり、バーベキューをします。例えばレストランで、シェフが豊富な野菜の知識を披露するより、「ぼくこの畑に行って来たんですよ!」という実体験のほうがよっぽどインパクトがあり、説得力があります。

 

震災直後は廃業も考えたほど苦しい時期があった久松農園。乗り越えたひとつの要因は、飲食店を開拓したことにありました。当時の売上げ構成は、9割が個人で1割が飲食店。個人客が一気に離れた中で、1割の飲食店に丁寧に営業をするとともに、他の飲食店も紹介してもらい、販路を拡大していきました。ビジネスの軸足を複数持つ事の重要性を強く感じたといいます。

  

農業の課題として、久松さんは「土地も人ももっと流動化すること」をあげます

 

久松農園では若い小柄な女性が働いています。最初は続かないかもしれないという心配をよそに、2年ほどで農場長ができるほど成長。俺の背中を見て育てという風土でなく、農業の仕組みを言語化、数値化して作り方を整備していた久松農園にはまったというのもあるだろうと分析します。

 

今は、農業に挑戦したい人がいても場がないために、いざ国や企業が大きな農業関連のプロジェクトを開始しようとした時に、人材がいないということに直面するといいます。久松農園のようなおもしろい農業をやる組織が増え、働ける場も増えていくことが求められています。

<セミナーを終えて>

今回の企画は、告知当初から申込みが次々に入り、開催前には締切をする人気のイベントになりました。

理由のひとつは、久松さんも青木さんも本やソーシャルメディアで丁寧に情報発信していることが大きく影響したように思います。会場にはそれぞれの知り合いの方、飲食店や農家、家具屋さんなどが参加されていました。また、面識はなくても本やサイトで情報に触れていて、会ってみたいと思う方が訪れていたようです。

 

ふたつめは、農業と林業への関心が高まっていること。飲食店など周辺の業界だけでなく、IT系の企業やメーカーの方など、多様な組織に属している方が参加していました。特に印象的だったのは、高校1年生の参加でした。このイベントを知った親御さんが、一次産業に関心がある息子さんに参加をすすめたそうです。アンケートには、次のようなことを書いてくれました。

「自分自身、1次産業に興味を持つ身だが、話しを聴けば聴くほど甘くない。が、やりがいというものが確かにそこにはありそう。将来は仕事を生きがいに出来る大人になりたいものだ。高1で、このような話しを聞く事ができてよかった」

今年5月にセミナーで久松さんの話しを聞き、ぜひ昨年opnlabで登壇いただいた青木さんと話す会を作りたいというのが企画のきっかけでしたが、想像以上にスピーカー同士も気が合い、多くの参加者の方にも満足いただいた良い会となりました。

青木さん、久松さん、参加者の皆様、そして珈琲を提供いただいた舘田さん、ありがとうございました。

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