ジェイアール東日本企画 駅消費研究センターは、首都圏で電車を利用して生活する約1,800万人の移動行動と消費行動、及び、そうした行動の背景にある人間心理をさまざまな手法で解明し、移動者に向けたマーケティングの在り方を、日夜研究しています。
今回の勉強会では、その駅消費研究センターのセンター長加藤肇さんより、日々の研究結果を、実際の駅ビルやエキナカ(駅改札内)にあるショップの写真や収集したデータとともに包み隠さずお話いただきました。
■活発化する駅消費
加藤さんのお話でまず驚かされたのは、ここ数年のエキナカにあるショップ・駅ビルの急成長ぶり。
品川駅のecuteや新宿駅のLUMINEなど、多くの駅で電鉄系の小売り販売店や商業施設を目にする機会が増えていますが、それらの売上高伸び率は、スーパーやコンビニ、百貨店といったどの小売業よりも高く、規模もJR東日本グループだけで1.5兆円。三越・伊勢丹ホールディングスを抜き、国内4位なのだそうです(JR西日本や東海を含めるとセブン&アイ・ホールディングス、イオンに次いで3位)。
もはや、電鉄会社は運輸事業だけでなく流通業としての機能も持ち始めています。今後もこうした動きは活発で、JR東日本に限らず鉄道各社、駅消費事業の拡大をそれぞれの経営計画の中で発表しています。
この急成長の要因の一つに加藤さんは「全世代の女性の就業率増加」をあげています。
働く女性にとって、平日にゆっくりと買い物の時間を取ることがままならない昨今。駅から離れた商業施設で買い物するよりも、通勤で必ず通るエキナカ・駅周辺ビルを利用したい。そうした女性の行動心理が駅消費の急成長を支えているようです。
■『駅消費実態調査2009』
次に加藤さんからは、東京駅30キロ圏在住の18歳~49歳の男女約2,750人を対象に、1週間の買い物行動についてWEBで行った調査『駅消費実態調査2009』の結果をお話しいただきました。その調査からは大きく分けて次の4つが分かったそうです(ここでは簡単にご紹介)。
(1) 約半数が駅関連商業施設を週1日以上は利用しており、ヘビーユーザーは18歳~29歳の若年女性である。
(2) 総買い物件数31,091件のうち、約1割はエキナカ・駅ビルで消費されている。駅前徒歩5分圏内を入れると、その数は約半数を占める。
(3) 駅消費について、エキナカは平日朝に利用される頻度が高く、駅ビルは夜がピークを迎える。(=通勤・通学の行き帰りの利用が多い)
(4) 駅は衝動的来店が非常に多い。
このことから、駅消費は改めて大きなマーケットであること。また、駅消費は移動と密接に結びついており、駅以外の場での消費とは異なる傾向があることが見えたそうです。
さらに。駅で思わず買ってしまうのは一体なぜなのか。エキシューマーの深層心理をひも解くために行われた「エキシューマーインサイト」の結果も発表していただきました。
■エキシューマーインサイト
エキシューマーインサイトの手法は次の通り。約500枚にも及ぶ抽象度の高い写真をインタビュールームに貼り出しておきます。調査対象者は、たとえば「街ではなく、ジュースバーのジュースを『駅で買って飲む』ってこんな気分」など出されたいくつかの質問に対し直感的に写真を選び出します。その後インタビュアーから、写真を選んだ意図をヒアリングされ、深層心理が探りだされていきます。
この調査からは、エキシューマーが抱く代表的な5つのインサイト(直感・洞察・発見)が紹介されました。
【5つの代表的なインサイト】
(1) 駅で気持ちのスイッチをする。
(2) ちょっとした出会いを駅消費に期待している
(3) 「ひとり」を堪能する。
(4) 駅に「我が家」「ふるさと」を見る。
(5) 駅でささやかな幸せを感じたい。
例えば、朝の駅コンビニでは手軽なバランス栄養食の売れ行きがよく、帰りは新聞の中でも「ゲンダイ」が売れるのだそうです。朝はバランス栄養食の購入を通じて、気持ちを仕事モードへ切り替える。帰りは小難しい経済新聞よりも、ちょっと気楽に読める新聞によって、気持ちをオフに切り替える。この消費行動はまさに(1)の現れといえます。
■移動者マーケティング
最後に。「移動者マーケティング」と呼ばれるマーケティング活動と、そこから発生したプロモーションの代表的事例をいくつかご紹介いただきました。
移動者マーケティングとは、Mover(移動者)に気づきをあたえ、Shopper(買い物客)へとスイッチさせる移動者に向けたプロモーショナルなマーケティング。移動行動中や駅の心理(インサイト)に訴えかけることで、需要を喚起し、購買へつなげようとするマーケティング活動のことです。
「金曜日はプレモレの日」といったキャッチコピーと美味しそうなビールを持った大物歌手が写し出された某大手飲料メーカーの駅貼りポスターを記憶している方もいるかもしれません。それらは、週末の会社帰りの移動者は1週間頑張った自分にご褒美をあげたいというインサイトがある。そこを狙ったプロモーションなのだそうです。
以上が加藤さんからお話しいただいた内容になります。
この後は、懇親会と称して、メルシャン・ワインスクエアで美味しいワインとお食事をいただきました。ちなみに、「ワイン」は駅消費される物販の中でも上位にあげられるのだとか。なぜなら、理由はワインは重いから、最寄り駅で買って帰るのが楽という行動心理からだそうです。納得!!
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